巧みな描写力を感じさせる具象画は、モチーフの本質まで捉えようと深く追求され、客観的に描かれています。
しかし緻密に観察され、写実的に描かれた具象画ほど、作家の「対象」への観念が強く反映されているというパラドックスをはらんでいるように思います。
わたしは作品が発するその独特の強さに、しばしば圧倒されてしまうことがあります。
できるだけ観念から離れ、けぶる空気、時間の流れを感じる自然現象のような表現で、あらためて「物質」が秘める性質について考えるきっかけになる作品を制作したいと思っています。
「抽象画」のような「具象画」という意味で「like abstraction」と展覧会のタイトルをつけました。
自然現象のような表現に、人為的と映るものはほんの少しだけでよいのでしょう。
塩崎綾子